薬剤師と患者とのコミュニケーション術
薬剤師にコミュニケーションスキルが必要な理由
薬剤師が患者との信頼関係を築く重要性についてお話します。この信頼関係が構築されることで、患者の治療効果が向上することが示唆されています。
医療従事者との連携
薬剤師は医師や看護師、介護士など、多くの医療従事者と連携を取りながら業務を行います。処方箋の内容に疑問がある場合は医師に照会する必要がありますし、患者の施設での服薬状況を確認することも。こうした連携を円滑に行うためには、適切なコミュニケーション能力が不可欠です。
患者との信頼関係の構築
薬剤師は患者と直接対話し、服薬や医薬品に関する相談に応じることがあります。患者が正しく薬を理解し、安心して服用できるようにするためには、柔らかなコミュニケーションが欠かせません。また、患者の病状や疑問に適切に対応するためにも、コミュニケーションスキルが重要です。
薬機法改正による業務変化
2020年の薬機法改正により、薬剤師には服薬指導の義務が課されました。これにより、患者の服薬状況や健康状態の変化を把握し、継続的なフォローアップが求められます。患者との密なコミュニケーションを通じて、適切な服薬指導やサポートを行えるようになります。
かかりつけ薬剤師制度の導入
2016年に導入されたかかりつけ薬剤師制度では、薬剤師は患者のかかりつけ薬剤師として24時間体制で服薬相談を受け付ける必要があります。地域医療の一員として患者をサポートするため、患者とのコミュニケーションが極めて重要です。これにより、薬剤師は患者の健康状態や服薬に関するニーズを正確に把握し、適切な対応ができるようになります。
薬剤師の役割拡大
以前は調剤中心の業務でしたが、現代では服薬指導や患者へのサポートが重視されています。薬剤師が持つ専門知識を活かすためには、患者とのコミュニケーションを通じて的確な情報提供やアドバイスを行う必要があります。
薬剤師にとってコミュニケーションスキルの向上は、業務環境の変化や法改正、患者との関係性の重要性などから重要なスキル。これらの要因により、薬剤師は単なる医薬品の管理者から、患者や他の医療従事者と連携し、継続的なサポートを提供する役割へと変化しています。
コミュニケーション術の基本
薬剤師が求められるコミュニケーションスキルの基本を抑えておきましょう。
傾聴力
傾聴力は、相手の話を理解し、引き出す能力です。薬剤師は患者の症状や不安を正確に把握するために、傾聴力を身につける必要があります。患者の話を一方的に聞かず、共感しながらじっくりと向き合う姿勢が大切です。
共感力
共感力は相手の感情や状況に寄り添う能力です。患者の不安や痛みを理解し、適切なサポートを提供するために重要です。共感することで、患者との信頼関係が築かれ、治療効果や服薬指導の成果が向上します。
雑談力
雑談力は日常会話を通じて相手との距離を縮める能力です。患者や医療従事者とのコミュニケーションを円滑にするために、適度な雑談を交えて会話を楽しいものにすることが大切です。これにより、相手の気持ちや状況をより深く理解できます。
提案力
提案力は、相手の問題やニーズに対して適切な解決策を提案する能力です。薬剤師は患者に適切な薬剤情報や服薬指導を提供することで、健康管理の支援に貢献します。豊富な知識と経験を活かし、患者の状況に合わせた助言を行うことが求められます。
臨機応変な対応力
薬剤師は様々な状況に対応する柔軟性が求められます。患者の状態や医療機関の状況に応じて、適切なコミュニケーションスタイルを使い分ける能力が必要です。臨機応変に対応することで、患者や医療従事者とのコミュニケーションを円滑に行うことができます。
これらのコミュニケーションスキルを意識して磨くことで、薬剤師はより効果的なサービスを提供し、患者の健康管理に貢献することができます。
ワンランク上のコミュニケーション術
よりコミュニケーションスキルをアップするためのコツを紹介します。基本ができているという方はこちらもチェックしてみてください。
専門用語は変換
医療従事者が普段使っている専門用語は、一般の患者さんにとって理解しにくい場合があります。痛みや症状などは、具体的な言葉に置き換えることで、患者さんがより理解しやすくなるでしょう。相手の立場に立って、専門用語を避けて、分かりやすい言葉で伝えることが大切です。
相手に合わせた話し方
相手の年齢や状況に応じて話し方を工夫することが重要です。高齢の方や聞き取りにくい方には、ゆっくりとした口調で丁寧に話すことで、伝わりやすくなります。また、子どもに対しては保護者も含めて安心感を与える話し方を心がけると良いでしょう。
相づちやうなずき
コミュニケーションの際には、相手の話を聞いていることを示すために相づちやうなずきを入れることが大切です。ただし、相づちは適切なタイミングで行い、相手の立場や状況に合った言葉を選ぶことがポイントです。
情報アップデート
薬剤師としては常に最新の医療情報を把握し、知識をアップデートしておくことが必要です。新しい薬や治療法の情報を積極的に収集することはもちろん、勤務先の地域のことやご近所のニュースなど、患者さんとの幅広いコミュニケーションができるように努めましょう。
ノンバーバルコミュニケーション
ノンバーバルコミュニケーションは、言語以外の手法を使ったコミュニケーションを指します。患者さんとのコミュニケーションでは顔の表情や身振り手振り、声のトーンがポイント。体調が悪い時でも、丁寧で穏やかな態度を心がけることで患者さんに安心感を与えることができます。
また、患者さんが言葉にできない悩みや心配事を察知するために、相手の表情や仕草に注意を払うことも大切です。
ミラーリング
ミラーリングは、相手の仕草や表情を自然な範囲で真似することで、相手との共感を深める手法です。
例えば、患者さんが症状の改善に喜んでいる時には、一緒に喜ぶなどの同様の表現を使用することで、相手の気持ちを理解し共感を示します。ただし、ミラーリングは相手を無意識に真似するわけではなく、自然な形で行うことが重要です。
バックトラッキング
バックトラッキングは、相手の発言を繰り返して理解を示す手法です。ミラーリングと似ていますが少し異なる点があります。
患者さんが「◯◯が痛くて…」と話した場合には、「〇〇が痛いのはとてもつらいですね」と同様の言葉で返すことで、相手の感情や状況を理解したことを示し、安心感を与えます。バックトラッキングを行う際には、表情やトーンを変えることで、より相手に対する理解と共感を示すことがポイントです。
パラフレーズ
パラフレーズとは、相手の言葉を整理して自分の言い回しで表現することです。例えば、「人手不足で困っている」という相手の話を「スタッフが足りなくて大変なのですね」と言い換えることで、相手の意図や内容を確認しやすくなります。パラフレーズを行うことで、お互いの認識のずれを防ぎ、相手に自分が理解していることを示すことができます。
アサーティブ
アサーティブなコミュニケーションは、自分の意見や考えを率直に伝える手法です。特に医療チームでのコミュニケーションでは、チームとしての意見や提案を適切に伝えることが求められます。アサーティブなコミュニケーションは攻撃的でも受身的でもないバランスの取れたスタイルであり、相手との関係性を損なわずに意見を伝えることができます。
例えば、医師から無理な依頼をされた時には、自分の状況を伝えたうえで受託できないことを伝え、いつなら対応できるという具体的な代替案を提示することで、自分の意見を尊重しつつ相手との関係を良好に保ちます。
結論ファースト
相手が分かりやすく理解できるように、結論ファーストの話し方を意識しましょう。結論ファーストとは、最初に自分の伝えたい内容の結論を述べ、その後に理由や具体例を示す方法です。このアプローチを取ることで、相手に何を重要とするのかを明確に伝えることができます。
上司にミスやトラブルを報告する際も、冗長な言い訳や余計な情報を避け、具体的な事実や結論から話すことが重要です。
PREP(プレップ)法
結論ファーストの話し方に加えて、PREP法を意識することも有効です。PREPとは、「結論(P)」「理由(R)」「具体例(E)」「結論(P)」の順に話すことを指します。この方法により、論理的で分かりやすい説明が可能です。
結論から話すことで伝えたいポイントを示し、理由や具体例で説得力を増し、最終的に結論を強調することで受け手に理解を深めることができます。
ボディランゲージ
ノンバーバルミュニケーションの一つのボディランゲージは、身体の動きや姿勢、表情、ジェスチャー、視線、そして人との距離感などを通じてコミュニケーションを行う手段です。これらの要素は言葉だけでは伝えられないニュアンスや情報を含んでおり、相手に対する感情や意図を表現する重要な役割を果たします。言葉とボディランゲージを組み合わせることで、より豊かで効果的なコミュニケーションが可能とになるでしょう。
これらのコミュニケーションスキルを実践することで、薬剤師として患者さんや医療チームとのコミュニケーションが円滑になり、信頼関係を築くことができます。日常業務で積極的に取り入れてみてください。